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ファージセラピー : ミニ英和和英辞書
ファージセラピー[ちょうおん]
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〔語彙分解〕的な部分一致の検索結果は以下の通りです。

: [ちょうおん]
 (n) long vowel mark (usually only used in katakana)

ファージセラピー : ウィキペディア日本語版
ファージセラピー[ちょうおん]

ファージセラピーバクテリオファージを用いた細菌感染症の治療法である〔''Silent Killers: Fantastic Phages? '', by David Kohn, ''CBS News: 48 Hours Mystery''.〕。 以前は、1920年頃の旧ソビエト連邦で広く使用・研究されていたが、ロシアおよびグルジア以外の国でこの治療法は用いられていない。ファージセラピーは医学のみならず、歯学獣医学農学などの分野にも応用できる可能性がある〔McAuliffe et al. "The New Phage Biology: From Genomics to Applications" (introduction) in Mc Grath, S. and van Sinderen, D. (eds.) ''Bacteriophage: Genetics and Molecular Biology'' Caister Academic Press ISBN 978-1-904455-14-1.reprint 〕。 ファージセラピーによる治療の対象が動物ではない場合、「生物的防除」 という用語が一般に用いられ、ファージセラピーと呼ばれることはあまりない。
バクテリオファージは抗生物質に比べてより特異的である。そのため理論上、宿主生物(ヒト, 動物, および植物)に対して無害なだけでなく, 腸内細菌叢のように病原性を持たず、日和見感染症を防ぐ善玉細菌に対しても無害であるバクテリオファージを選択して用いることができる。 ファージセラピーは高い治療係数を持ち、それ故にファージセラピーはほとんど副反応を起こさないと考えられている。ファージは''in vivo''で増殖するため、投与量を減らすことができる。一方でこの特異性は欠点にもなる。ファージは特異性の高い、一部の細菌株しか殺さない。そのため、ファージが細菌を殺す確率を高めるため、ファージを混ぜて用いるか、または予め試料を採取して感染している細菌に適合するファージを選択して用いるといった手法が採られる。
近年では、ファージはロシアやグルジア〔BBC Horizon: Phage - The Virus that Cures 1997-10-09〕で汎用抗生物質に反応しない細菌感染の治療に使用されている。抗生物質が浸透できない、多糖の層に覆われたバイオフィルムが形成されている部位では抗生物質よりも効果的である傾向がある。西欧では、ヒトに対する使用は承認されていないが、食中毒細菌(''リステリア'')を殺すためのファージが現在使用されている。
==歴史==

1915年と1917年のとFelix d'Hérelleによるバクテリオファージの発見以降、ファージセラピーは細菌感染症根絶の鍵となると多くの研究者に認識された。グルジア人のGeorge Eliavaも類似の発見をしている。彼はパリのパスツール研究所へ赴任し、そこでd'Hérelleと出会い、1923年にはグルジアトビリシにファージセラピーの発展を目的とした機関、Eliava Instituteを創設した。
ロシアを含む近隣諸国でも、この分野における大規模な研究開発が始められた。1940年代のアメリカでは、大製薬会社のイーライ・リリーによってファージセラピーの商業化が請け負われた。
ファージの生物学的知見と正しいファージカクテルの使用法が明らかになってきていた一方で、初期のファージセラピーはしばしば信用に欠けたものであった。1941年に抗生物質が発見され、アメリカとヨーロッパで一般的に売られるようになると、いつしか欧米の科学者たちはファージセラピーの使用と研究からほとんど興味を失っていた。
1940年代に抗生物質の開発が進んだ西側諸国と異なり、ロシアの科学者たちは既に野戦病院で負傷兵士の治療に成功していたファージセラピーの開発を続けた。第二次世界大戦の間、ソ連では赤痢や壊疽など様々な細菌感染症にり患した兵士をバクテリオファージを用いて治療している。ロシアの研究者たちはファージセラピーの開発と改善を続け、自らの研究成果を発表した。しかし冷戦が障壁となり、この知見が翻訳されて、世界中に広まることはなかった〔"Stalin's Forgotten Cure" ''Science (magazine)'' 25 October 2002 v.298 reprint 〕 。この時代の研究成果は2009年に英語で発行された"A Literature Review of the Practical Application of Bacteriophage Research"に要約されている〔Nina Chanishvili, 2009, "A Literature Review of the Practical Application of Bacteriophage Research", 184p.〕。
1950年代の抗生物質耐性菌の出現と科学的知見の発展により、細菌感染症と慢性多菌性バイオフィルムを根治できるファージセラピーに対し、再び注目が集まっている〔 (audio)〕。
ファージセラピーは生の食材中のカンピロバクターや新鮮な食材中のリステリア、食材中の腐敗菌などの病原菌を除去するための手段として研究されてきた。農産業の現場ではファージは家畜のカンピロバクター大腸菌サルモネラ、養殖魚のラクトコッカスビブリオ、及び農業な重要性から植物の''Erwinia''、''Xanthomonas''といった病原菌を制する目的で使われていた。しかしながら、最も古い使用例は医学におけるものである。ヒトの医学ではファージは大腸菌赤痢菌ビブリオなどによって引き起こされる下痢や皮膚常在菌であるブドウ球菌連鎖球菌による創傷感染などに用いられてきた。近年ではファージセラピーは全身感染症や、さらには細胞内寄生細菌感染症にも適応されてきており、増幅しないファージやライシンのようなファージ由来の酵素も細菌と戦うための武器に加えられた。しかしながら、実際の現場における、これらの新規ファージ療法の効果は明らかになっていない〔。
西側諸国でファージセラピーが脚光を浴びたのは1994年に遡る。この年、Soothillは動物実験モデルを用いて、ファージが潜在性の緑膿菌感染症を抑えることで皮膚移植の成功率をあげることを示した。近年のモデルによる研究もこのSoothillによる発見を支持してきた。
ファージセラピーの目的ではないが、既存の抗生物質のデリバリー体としてファージを用いる手法も、治療に用いられる可能性がある。また、抗癌剤の運搬にファージを用いる手法も、組織培養によるin vitroの予備実験の報告がある。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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