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洗張 : ウィキペディア日本語版
洗張[あらいはり]

洗張、または洗い張り(あらいはり)は、和服(呉服)専門の洗濯方法の一つである〔''洗い張り''デジタル大辞泉コトバンク、2012年9月14日閲覧。〕〔''洗い張り''大辞林 第三版、コトバンク、2012年9月14日閲覧。〕〔''洗張り''世界大百科事典 第2版、コトバンク、2012年9月14日閲覧。〕〔''洗い張り''Yahoo!百科事典、2012年9月14日閲覧。〕〔''あらいはり''Yahoo!辞書、2012年9月14日閲覧。〕。着物等、縫い合わせて衣服の形状をなしているものから抜糸をして、解き離しての洗浄を行う〔〔〔〔〔。この手法から、解洗解洗い(ときあらい)ともいい、対義語は丸洗(まるあらい)〔〔''洗い張り''染匠、2012年9月14日閲覧。〕。
「解洗」を行った後、「張」(はり)の作業で仕上げ・乾燥を行うが、この作業およびこの手法で乾燥させる布地を張物、または張り物(はりもの)という〔張物 Yahoo!辞書、2012年9月14日閲覧。〕。板張りに使用する板を張板(はりいた)、張物板(はりものいた)といい、この作業を生業とする者を張物屋(はりものや)、張屋(はりや)、張物師(はりものし)、あるいは張殿(はりどの)という〔〔小山田ほか、p.142.〕。
「洗張」を行う手工業者職人洗張屋(あらいはりや)と呼ぶ〔。現在では染物屋、とくに関西では悉皆屋(しっかいや)に発注する〔〔〔''悉皆屋''、世界大百科事典 第2版、コトバンク、2012年9月14日閲覧。〕。
== 略歴・概要 ==

「洗張」がいつごろ始められたかはわからないが、10世紀末の970年ころに成立したとされる『宇津保物語』には、「張物」を行う人物がすでに登場している〔。
「洗張」は、室町時代14世紀 - 16世紀)にはすでに存在し、染物屋が兼業で手がけていたとされる〔''しみ抜きを商売にした日本最初の人物が知りたい''福井県立図書館国立国会図書館、2012年9月14日閲覧。〕。「解洗」のうち、「張物」の工程を専門に行う職人「張殿」(はりどの)が、15世紀末の1494年(明応3年)に編纂された『三十二番職人歌合』に紹介されており、遅くともこの時期には「張物」の専門職が存在していたといえる〔。同歌合には「いやしき身なる者」として、「へうほうゑ師」(表補絵師)とともに対になっており、小袖を着た女性が無数の(しんし)で布を張っている姿が描かれている〔。この歌合に載せられた歌は、
* きぬ共を 春の日しめし おきもあへず 花見の出立 急がるるころ
* 雨の日を もらすは惜しき 商ひに うちばり広き 殿作りせん
というもので、「張殿」の仕事が春になると花見を目前に繁忙期になること、野外で行う作業であるため雨天は休まざるをえず、室内で「張物」ができるような豪邸をつくりたいものだという歌に「張殿」の職能の特徴を描いている〔張殿 、Yahoo!辞書、2012年9月18日閲覧。〕。
近世の17世紀末、1690年(元禄3年)に刊行された風俗事典『人倫訓蒙図彙』には、
* 練物・張物師 - 絹を練る家、張物をなす。一切の染物又は洗沢物これをはるなり。
と紹介されている〔。洗沢物とは洗濯物の意で、生絹の膠質を除去する「練物」の作業をする家では、「張物」を行うのだということである。江戸時代17世紀 - 19世紀)には、「洗張」を専業で行う「洗張屋」が登場した〔。この時代になると、大坂(現在の大阪府大阪市)に「悉皆屋」が登場し、大坂で衣服の染め・洗張の注文を受け、京都の専門店に出す、という仲介業で、のちには染め・洗張を行う業者・職人を指すようになり、現在に至る〔。1786年(天明3年)〔京伝による前書きに「天明丙午」(=天明3年=1786年)とある。Araibari ukiyo moyo-maegaki 、2012年9月18日閲覧。〕、岩瀬京伝(のちの山東京伝)が上梓した『洗張浮世模様』は、「洗張」の姿の華やかさになぞらえて、当時流行した模様を紹介したイラスト集である。
近代以降、家庭で「洗張」をすることができたが、第二次世界大戦(1940年代)以降、染物屋・悉皆屋に外注するケースが増えている〔。1949年(昭和24年)に設定された日本標準産業分類では、細分類「洗張・染物業」(8291)として「洗張業」は「染物業」とともに1カテゴリを形成していたが、2007年(平成19年)の改正で「その他の洗濯・理容・浴場業」と統合され、小分類「その他の洗濯・理容・美容・浴場業」を形成した〔日本標準産業分類(平成19年11月改定) 分類項目名 総務省統計局、2012年9月18日閲覧。〕。
現在の日本での費用相場は、「洗張」が12,000円、ガード加工に12,000円、さらに仕立てる必要があるので、仕立て代が38,000円といったところだという〔。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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