翻訳と辞書
Words near each other
・ 読字障害
・ 読師
・ 読広
・ 読影
・ 読後
・ 読後感
・ 読心ルーペ
・ 読心術
・ 読掛ける
・ 読書
読書するマグダラのマリア
・ 読書する女
・ 読書の儀
・ 読書の時間
・ 読書の面白味を味わう
・ 読書ダム
・ 読書マラソン
・ 読書三余
・ 読書三到
・ 読書三昧


Dictionary Lists
翻訳と辞書 辞書検索 [ 開発暫定版 ]
スポンサード リンク

読書するマグダラのマリア : ミニ英和和英辞書
読書するマグダラのマリア[どくしょするまぐだらのまりあ]
=====================================
〔語彙分解〕的な部分一致の検索結果は以下の通りです。

読書 : [どくしょ]
  1. (n,vs) reading 
: [しょ]
 【名詞】 1. penmanship 2. handwriting 3. calligraphy (esp. Chinese)

読書するマグダラのマリア : ウィキペディア日本語版
読書するマグダラのマリア[どくしょするまぐだらのまりあ]

読書するマグダラのマリア』(どくしょするマグダラのマリア(、)は、初期フランドル派の画家ロヒール・ファン・デル・ウェイデンが15世紀に描いた絵画。オリジナルはオーク板に油彩で描かれた板絵で、もともとはより大きな祭壇画だったが、後にその祭壇画が複数枚に裁断されてしまったものである。この『読書するマグダラのマリア』は、その裁断された祭壇画の現存する断片の三枚のうちの一つで、1860年以来ロンドンナショナル・ギャラリーが所蔵している。正確な制作年度は不明だが、1435年から1438年ごろに完成を見たのではないかと考えられている。
透き通るような肌、高い頬骨、楕円の目をもつ、当時の絵画作品の典型ともいえる理想化された上流階級の女性が描かれた作品である。描かれている女性は聖女マグダラのマリア(以下単なる「マリア」は「マグダラのマリア」を指す)とされており、その根拠として伝統的なキリスト教芸術でマリアを意味する香油壷が画面前面の床に描かれていることがあげられる〔Sarah Carr-Gomm, ''The Dictionary of Symbols in Art'', CIS Cardigan Street, (1995) ISBN 86391 553 2〕。この作品ではマリアは読書に没頭しており、過去の罪業を悔悛し赦された観想的な生活を送る人物として表現されている。カトリックの伝統的教義ではマグダラのマリアはイエスの足に香油を注いだベタニアのマリア〔『ヨハネによる福音書』(12:3 - 8)、『ルカによる福音書』(12:3 - 8)にも言及あり。〕、ならびに罪の女 〔『ルカによる福音書』(7:36 - 50)〕と同一視されている。図像学ではマグダラのマリアは本とともに描かれ、沈思しているその様子は涙にくれているか、あるいは目を背けて描かれることが多いとされている。ファン・デル・ウェイデンは、マリアの衣服のしわや質感、マリアの後方に立つ人物が持つロザリオの水晶、室内の様子など、細部にわたる非常に精緻な描写でこの作品を仕上げている。
『読書するマグダラのマリア』の背景は、長い間オリジナルの状態から暗色一色で厚く塗りつぶされてしまっていた。しかしながら1955年から1956年にかけて作品の洗浄が行われ、描かれていたマリアの後ろに立つ男性と裸足でひざまずく女性、そして窓越しの外の風景が元通りに修復された。背景に描かれている二人の人物像が一部しか残っていないのは、『読書するマグダラのマリア』がオリジナルの祭壇画から切断された作品であるためである。リスボンのカルースト・グルベンキアン美術館 (:en:Museu Calouste Gulbenkian) には聖ヨセフの頭部が描かれているとされる『聖ヨセフの頭部』と聖カタリナを描いたとされる『聖女の頭部』と呼ばれる『読書するマグダラのマリア』の3分の1程度の大きさの2点の板絵が所蔵されており、この2点の板絵がオリジナルの祭壇画から切断された断片の一部ではないかと考えられている〔"The Magdalen Reading ". National Gallery, London. Retrieved 6 December 2010.〕。オリジナルの祭壇画は聖会話を描いたもので〔「聖会話」はキリスト教芸術の絵画様式の一つで、数名の聖者と聖母子とがくつろいだ雰囲気で描かれた作品。。〕〔"カルースト・グルベンキアン美術館、Bust of St Catherine ?; Bust of 'St Joseph' . Museu Gulbenkian, 19 April 2009. Retrieved 25 December 2010.〕、ストックホルムの国立美術館に、オリジナルの祭壇画から聖母子と聖者たちが描かれた部分を模写した1500年代終わりごろのドローイングが所蔵されている。このドローイングから『読書するマグダラのマリア』は、オリジナルの祭壇画の右側部分であったことが判明した。
ファン・デル・ウェイデンは生前には非常に成功した画家であったが、17世紀になるころにはその名前は忘れ去られてしまっており、作品と影響が再評価されたのは19世紀初頭になってからのことだった。『読書するマグダラのマリア』に残る最初の来歴は1811年の即売会のものである。その後オランダで多くの画商を経て、1860年にパリのコレクターからロンドンのナショナル・ギャラリーが買い取った。この作品について美術史家ローン・キャンベルは「15世紀美術でもっとも優れた傑作の一つであり、ファン・デル・ウェイデンの初期作品としてはもっとも重要な絵画である」としている〔Campbell (1998), p.405〕。
== 概要 ==

初期ルネサンス絵画に描かれたマグダラのマリアは、複数の聖書における登場人物を混成したものだった。『読書するマグダラのマリア』でも、カトリックの伝統教義においてマグダラのマリアと同一視されていたベタニアのマリアをもとにして描かれている。ベタニアのマリアはキリストの足元に座して、み言葉に耳を傾ける物静かな女性として表現され「観想的生活」を象徴する。これに対してマリアの姉マルタは、マリアに接待の手助けを求める忙しい女性として表現され「活動的生活」を象徴している〔Jones (2011), 54〕。ファン・デル・ウェイデンはこの作品でマリアを、首を軽くかしげてこの絵を観る者から上品に目をそらす、敬虔な若い女性として描いている。書物に没頭しているマリアは、女性を防護する効果があるとされていた白い肌着などを着用した姿で表現されている。美術史家のローン・キャンベルによれば描かれている書物は「13世紀ごろのフランスの聖書のよう」に見え「間違いなく聖なる書物」である〔Campbell (1998), pp.395 - 396, p.398、引用部分は p.396, p.398.〕。当時の絵画作品で読書する女性を描いた作品はほとんど存在していないが、文字を読むことが出来るということが、描かれている女性が上流階級の出身であるということを意味している〔Belloli (2001), p.58〕。
ファン・デル・ウェイデンは肖像の姿勢に意味を持たせることが多く、この作品でも木製のサイドボードにもたれかかって赤色のクッションに座っているというマリアの半円状に描かれた外観が、自身を取り巻くあらゆるものに対して超然とし無関心であることを強調する効果がある〔。足元には、福音書にマリアがキリストの墓に香料を持参したという記述があることからマリアを象徴するシンボルとなっているアラバスターの香油壷が置かれている〔『マルコによる福音書』(16:1)、『ルカによる福音書』(24:1)、『ヨハネによる福音書』(12:3 - 8)〕。窓越しの景色には遠くの運河に弓手が立っている風景が描かれ、対岸には運河の水面にも映る二人の人物像が描かれている〔Potterton (1977), p.54〕。

ファン・デル・ウェイデンが描いたマリアのポーズは、ファン・デル・ウェイデンの師と考えられている画家ロベルト・カンピンとその工房が良く描いた宗教的な女性のポーズによく似ている〔。この作品におけるテーマ、色調ともに、プラド美術館が所蔵するカンピンの『ウェルル祭壇画』に描かれた聖バルバラに酷似しており〔Clark (1960), p.45〕、さらにカンピンの作品ではないかと考えられているベルギー王立美術館が所蔵する『受胎告知』に描かれた聖母マリアにも似ている〔Campbell (1998), p.400〕。
他のファン・デル・ウェイデンの作品にみられる人物像と同様に、この作品におけるマグダラのマリアの表情は彫刻のようなくっきりとした表現で、身に着けている衣服も詳細に描かれている。中世美術においてマリアは裸身、あるいは赤、青、緑などの鮮やかな衣服で描かれることが多く、白の衣服で描かれることはまずない。この作品でも緑のローブを身にまとった姿で描かれている〔Salih (2002), 130〕。緑のローブは胸下の帯(サッシュ (:en:Sash)) で強く締め付けられ、アンダースカートに施された錦織が装飾のようにローブの下に見えている〔。2009年に美術史家チャールズ・ダーウェントは、マグダラのマリアが当時は娼婦だったと考えられていたことがこの作品から見て取れると指摘した。それはマリアのローブ裏面の毛皮に表現された毛羽 (:en:Nap (textile)) と、頭部のベールからこぼれ落ちる髪の毛からだった。ダーウェントは「軽く曲げられたマリアの指は完全性を表しているかのようだ。無垢と官能との両方が表現され、ファン・デル・ウェイデンが描いたこのマリアは完全無欠で満ち足りているかのように見える。だが、その見方は正しくない〔Darwent, Charles. "Rogier van der Weyden: Master of Passions, Museum Leuven, Belgium ". The Independent, 27 September 2009. Retrieved 1 January 2011.〕」としている。中世では毛皮は女性の官能の象徴であり、マグダラのマリアを連想させるものとされていた。このことについて中世歴史家のフィリップ・クリスピンは、ハンス・メムリンククエンティン・マセイスといった芸術家が毛皮を身に着けたマリアを描いたことに言及し、「ロヒール・ファン・デル・ウェイデンの『読書するマグダラのマリア』以来、マリアは毛皮で裏打ちされた衣服で描かれるようになった」と指摘している〔Crispin (2008), p.157〕。
美術史家キャンベルは、この作品での細部にわたる詳細な描きこみはヤン・ファン・エイクのそれを遥かに凌ぐものであるとしている。マリアの唇は朱色の濃淡と白、赤、さらにそれぞれの混色で着色されており、唇の端に行くにしたがって消え入るように薄くなっていく。ローブの毛皮の裏地には、ほとんど純白といえる色調から漆黒といえるような色調まで様々な階調のグレイが使用されている。ファン・デル・ウェイデンはローブの流れに沿って絵筆を平行に用いることによって毛皮の質感を表現し、顔料が乾燥する前に毛皮の毛羽立ちを描きいれている。金細工にはインパスト(厚塗り (:en:impasto))の技法が用いられ、様々な色合い、大きさの点描と格子状の線描で構成されている〔Campbell (1998), p.402〕。
マリアの周囲に描かれているさまざまなものも、非常に詳細に表現されている。とくに木製の床面、釘、マリアの衣服の皺感、窓越しに見える人物の衣服、ヨセフが持つロザリオのビーズなどに顕著である〔〔。上方から降りそそぐの光の効果も入念に計算され、ヨセフが持つロザリオのビーズは明るく輝き、光がもたらす陰影の微妙な表現がサイドボードの飾り格子、本の金の留め具などにその効果をみることができる。マリアは読書に没頭しており、自身の周囲にはまったく関心を払っていないように見える。ファン・デル・ウェイデンはマリアを非常に静謐な品位を持つ人物として描いているが、このような表現はファン・デル・ウェイデンの作品にはあまりみられない。静謐な雰囲気の作品を好んで描いたヤン・ファン・エイクとは対照的に、ファン・デル・ウェイデンは当時のネーデルラントの画家の中でもとりわけ感情表現豊かな描写をする画家だったと見なされている〔。
美術史家ローン・キャンベルは、窓越しに描かれた小さな女性像と水面に映った女性の姿を「絵画におけるちょっとした奇跡」であるとし、「細部における精緻な描写はヤン・ファン・エイクをはるかに凌ぎ、その技量はじつに驚くべきものだ」と絶賛している。さらにキャンベルはこのような細部にわたる詳細表現は、祭壇画としてあるべき場所に収められていたときには、祭壇画から一定の距離がある会衆にはまったく分からなかったことだろうと指摘している〔Campbell (1998), p.396 and p.402〕。しかしながらこの作品のその他の部分については優れた表現とは言えず、創造性にかけているともいわれている。ある評論家は床部分とマリアの背後に描かれている食器棚はほとんどが未完成のようであるとし、「薄っぺらい印象しか与えない」と評している〔。食器棚の上に描かれた様々なものは、オリジナルの状態から切り取られてしまった現在ではその基部しかみることができない。右側の小さなピッチャーのように見えるものはおそらく聖遺物を収めた小箱で、左側に置かれているのは戸口を模した鋳造彫刻である〔Ward (1971), p.35〕。


抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
ウィキペディアで「読書するマグダラのマリア」の詳細全文を読む




スポンサード リンク
翻訳と辞書 : 翻訳のためのインターネットリソース

Copyright(C) kotoba.ne.jp 1997-2016. All Rights Reserved.