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テスカトリポカ : ウィキペディア日本語版
テスカトリポカ

テスカトリポカTezcatlipoca)は、アステカ神話の主要なの1柱である。
== 概要 ==
神々の中で最も大きな力を持つとされ、キリスト教の宣教師たちによって悪魔とされた。Tezcatlipoca は、ナワトル語tezcatl (鏡)、poca (煙る)という言葉から成り、従ってその名は「煙を吐く鏡」を意味する。鏡とは、メソアメリカ一帯で儀式に使用された黒曜石の鏡のことを示す。
その神性は、夜の空、夜の翼、北の方角、大地、黒耀石、敵意、不和、支配、予言、誘惑、魔術、美、戦争や争いといった幅広い概念と関連付けられている。この神の持つ多くの別名は神性の異なる側面を示している。
Moyocoyani (モヨコヤニ、全能者)、Titlacauan (ティトラカワン、我らは彼の奴隷)、Ipalnemoani (イパルネモアニ、我らを生かしている者)、Necoc Yaotl (ネコク・ヤオトル、両方の敵)、Tloque Nahuaque (トロケ・ナワケ、近くにいる者傍らにいる者の王)〔意訳して「天と地の所有者」と解釈する説もある。テスカトリポカ以外の神にも用いられる。〕、 Yohualli Ehecatl (ヨワリ・エヘカトル、夜の風)〔9柱の夜の神のうち、Ehecatl (エヘカトル、風)の時間を司る神が Itztliイツトリ、黒曜石)である。姿は黒いテスカトリポカと同一である。〕、Ome acatl (オメ・アカトル、2の葦)〔Omacatl(オマカトル)とも書く。別の神と見なす説もある。〕、Ilhuicahua Tlalticpaque (イルウィカワ・トラルティクパケ、天と地の所有者)〔トロケ・ナワケ同様、他の神にも用いられる。〕、Nahualpilli (ナワルピリ、高貴な魔術師)〔テスカトリポカはナワリ(変身)の名人とされる。〕などである。
通常テスカトリポカは、身体は黒く、顔に黒と黄色の縞模様を塗った姿として描かれ、しばしば右足が黒耀石の鏡か蛇に置き換わった姿で表現される。これはアステカの創世神話において大地の怪物と戦い、右足を失ったことを表している。時として胸の上に鏡が置かれ、鏡から煙が生じている様子で描かれる場合もある。
テスカトリポカのナワルジャガーであり〔Nahual は「匿われた者」の意。魔術使いの動物〕、神性のジャガー的な側面が Tepeyollotlテペヨロトル、山の心臓)という神とされる〔創世神話における現在(第五)の世界は地震により終わると予言されている。また、第一の世界を崩壊させたのは一匹のジャガーである。〕〔次の2神もテスカトリポカの化身・忌み名として、同一視される。Chalchiuhtotolinチャルチウトトリン、宝石の七面鳥)は、祭りの際にテスカトリポカを罪の象徴として雄の七面鳥で表したとされる。イツトリ (黒耀石)は名前の通り、メソアメリカ地域の鏡・ナイフの材料である。〕。
アステカの祭祀暦であるトナルポワリ暦でテスカトリポカはトレセーナ「1のオセロトル(ジャガー)」を司り、またアカトル(葦)の日の支配者である〔Taube & Miller 1993 p. 164〕 〔ボルジア絵文書によると、「1のジャガー」はケツァルコアトル、「1のリザード」が Yayauhqui Tezcatlipoca (ヤヤウキ・テスカトリポカ、黒いテスカトリポカ)である。また、葦の日の神は Tezcatlipoca Ixquimilli (テスカトリポカ・イシュキミリ、目に包帯を巻いたテスカトリポカ)である。〕。
テスカトリポカの姿はオルメカ人やマヤ人に信仰された初期のメソアメリカの神々を思い起こさせる。いくつかの類似点が、マヤ神話の『』に書かれたキチェ族の神に存在する。ポポル・ヴフの中心的な神は、Tohil〔Huracan、フラカンのことを指す。〕 という黒耀石を意味する名であり、生贄を要求する神であった。また、古典期マヤの統治と雷の神である「神K」は、煙を出す黒耀石のナイフを額につけ、片足が蛇に置き換わった姿で描かれている〔Manikin Scepter (人間型の笏)としても知られる。今日では、K'awil (カウィール)と読むことが判明している。〕。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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