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馬頭観音 : ミニ英和和英辞書
馬頭観音[ばとうかんのん]
(n) Kannon image decorated with an ornament in the shape of a horse's head
===========================
: [うま]
 【名詞】 1. (1) horse 2. (2) promoted bishop (shogi) 
馬頭 : [ばとう, めず]
 【名詞】 1. Hayagriva 2. Horsehead (tantric Buddhist deity)
馬頭観音 : [ばとうかんのん]
 (n) Kannon image decorated with an ornament in the shape of a horse's head
: [あたま, とう]
 【名詞】 1. counter for large animals 
: [かん]
  1. (n,n-suf) look 2. appearance 3. spectacle 
観音 : [かんのん]
 【名詞】 1. Kannon 2. Kwannon 3. Buddhist deity of mercy 
: [おと, ね]
  1. (n,n-suf) sound 2. note 
馬頭観音 : ウィキペディア日本語版
馬頭観音[ばとうかんのん]

馬頭観音(ばとうかんのん / めづかんのん)、梵名ハヤグリーヴァ (हयग्रीव )は、仏教における信仰対象である菩薩の一尊。観音菩薩の変化身(へんげしん)の1つであり、いわゆる「六観音」の一尊にも数えられている。柔和相と憤怒相の二つの相をもち、日本では柔和相の姿はあまり知られておらず作例も少ない。そのため、観音としては珍しい忿怒の姿をとるとも言われ、通例として憤怒相の姿に対しても観音と呼ぶことが多いが、密教では、憤怒相の姿を区別して馬頭明王とも呼び、『大妙金剛経』(大正蔵:No.965)〔『大妙金剛経』は、正式名称を『大妙金剛甘露軍孥利焔鬘熾盛金剛経』といい、そこに説かれる「八大明王」は降三世明王大威徳明王大笑明王大輪明王馬頭明王無能勝明王不動明王歩擲明王の八尊となる。一般に真言宗では、「五大明王」に烏枢沙摩明王無能勝明王、馬頭明王の三尊を加えて「八大明王」とするが、天台宗の「五大明王」には烏枢沙摩明王が入っているので、この三尊では八尊とならない。〕に説かれる「八大明王」の一尊にも数える。
== 概要 ==
梵名のハヤグリーヴァ(音写:何耶掲梨婆賀野紇哩縛)は「馬の首」の意である。これはヒンドゥー教では最高神ヴィシュヌの異名でもあり、馬頭観音の成立におけるその影響が指摘されている〔『如意輪観音・馬頭観音像』(至文堂)、p54。〕。
他にも「馬頭観音菩薩」、「馬頭観世音菩薩」、「馬頭明王」、「大持力明王」に加え、チベット密教のニンマ派では『八大ヘールカ法』〔『八大ヘールカ法』は、日本の「八大明王法」に相当する密教の修法で、『大妙金剛経』が漢訳されるのと同時代に、チベット密教ニンマ派の開祖グル・パドマサンバヴァによって直接チベットに伝えられた。『八大ヘールカ法』は、『修部の八教説』(ドゥパ・カギェー:sgruppa bkah bragyad)、または『八大守護尊の体系』(イダム・ドゥパ・カギェー:ydam sgruppa bkah bragyad)とも呼ばれる。ここでいう『八大守護尊』とは、妙吉祥ヘールカ(大威徳明王)・蓮華ヘールカ(馬頭明王)・真実ヘールカ・甘露ヘールカ(甘露軍荼利明王)・金剛橛ヘールカ(プルパ金剛)・殊勝ヘールカ・呪語ヘールカ・世神ヘールカの八尊を指し、日本密教で明王と呼ばれている尊格も登場する。〕〔「西蔵仏教宗義研究 第三巻 トゥカン『一切宗義』 ニンマ派の章」(東洋文庫)、pp.108-109、p161。〕〔『大チベット展』(株式会社毎日コミュニケーションズ)、図版 ツ73-1〜ツ73-9。〕の「パドマ・スン」(蓮華ヘールカ〔蓮華部を守る憤怒尊で「蓮華口密」の意味。〕)、一般には「タムディン」(rta mgrin)〔『チベットの仏たち』(方丈出版)、pp.60-64。〕、「ペマ・ワンチェン」。中国密教では「馬頭金剛」〔『清宮藏傳佛教文物』(故宮博物院紫禁城出版社)、p106、p224。〕、「大持力金剛」など様々な呼称がある。衆生の無智・煩悩を排除し、諸悪を毀壊する菩薩である。
転輪聖王の宝馬が四方に馳駆して、これを威伏するが如く、生死の大海を跋渉して四魔を催伏する大威勢力・大精進力を表す観音であり、無明の重き障りをまさに大食の馬の如く食らい尽くすというところから、「師子無畏観音」ともいう。
他の観音が女性的で穏やかな表情で表されるのに対し、一般に馬頭観音のみは目尻を吊り上げ、怒髪天を衝き、牙を剥き出した憤怒(ふんぬ)相である。このため、密教では「馬頭明王」と呼ばれて仏の五部で蓮華部の教令輪身(きょうりょうりんじん)であり、すべての観音の憤怒身ともされる〔『馬頭観音供』(芝金聲堂)、pp.56-58。〕。それゆえ柔和相の観音の菩薩部ではなく、憤怒相の守護尊として明王(みょうおう)部に分類されることもある。
また「馬頭」という名称から、民間信仰では馬の守護仏としても祀られる。さらには、馬のみならずあらゆる畜生類を救う観音ともされていて、『六字経』(大正蔵:No.1186)〔『六字経』と呼ばれる経典は、日本では奈良時代から信仰され用いられてきた。主に罪を滅し、呪詛の類を退けて、自身と家族の生活を安穏にし、怨敵を退ける目的をもつ陀羅尼や呪法を説くもので、経典は一冊ではなく類書が多い。また、その修法の本尊も「釈迦金輪」・「釈迦金輪曼荼羅」・「六観音」・「六字観音」・「六字明王」等々と一定していない。「釈迦金輪曼荼羅」には種々あるが、このうち『六字経』に関係する釈迦金輪の曼荼羅は、別名『六字経曼荼羅』と呼ばれ、釈迦金輪を中心として六体の観音を描くもので、ここに登場する「六観音」が単独に信仰されるようになり、六観音を円形に描く曼荼羅をも『六字経曼荼羅』呼ばれるようになったことから、『六字経』を離れて「六観音」の信仰が確立したとも言われている。なお、『六字経』と呼ばれる経典には以下のようなものがある。主本は『六字神呪経』(大正蔵:No.1186)で、他には『六字呪王経』(大正蔵:No.1044)、『六字神呪王経』(大正蔵:No.1045)、『六字陀羅尼呪経』(大正蔵:No.1046)、『聖六字大明王陀羅尼経』(大正蔵:No.1047)が挙げられる。〕を典拠とし、呪詛を鎮めて六道輪廻の衆生を救済するとも言われる「六観音」においては、畜生道を化益する観音とされる。
この観音の柔和相は「赤観音」〔『赤観音阿闍梨潅頂次第訳註』(蓮華堂)を参照。〕と呼ばれ、チベット密教や中国密教では、「ブンガ・ディオ観音」、「ブンガ・マティ観音」や、「大悲生海赤観音」、「大悲生海観音」、「紅観音」とも呼ばれる。日本では『理趣経』(大正蔵:No.243)〔『理趣経』は、主に日本の真言宗において常用される日課経典で、密教の大楽思想を説く経典である。別名を『大楽金剛不空真実三麼耶経』、あるいは『金剛頂瑜伽般若理趣経』、『大楽金剛不空真実三摩地耶経般若波羅蜜多理趣品』ともいう。〕の第四段と、『理趣釈経』(大正蔵:No.1003)〔『理趣釈経』は、先に挙げた『理趣経』の注釈書であり、この経典の取り扱いをめぐって空海最澄が袂を分かつことになったことで有名な書物である。別名を『大楽金剛不空真実三昧耶経般若波羅蜜多理趣釈』という。〕に説かれる観音の成仏相である「得自性清浄法性如来」〔「得自性清浄法性如来」は、「蓮華王菩薩」ともいう。〕がこれに相当し、「赤観音」は、その母尊として「蓮華部母」〔「蓮華部母」は「蓮華王母」とも言い、如来の五智であるところの『妙観察智』のことを指しており、智慧(プラジュニャー)は梵語で女性名詞となるため、密教では女尊として表現されている。この『妙観察智』は蓮華部を代表する智慧であるため、観音の明妃である「蓮華部母」や、阿弥陀如来の明妃である「白衣観音」に配される。それゆえ日本密教では、馬頭明王があらゆる観音の憤怒相であるので、修法の際には「蓮華部母」の賛嘆文(梵文・漢文)や真言を唱える。〕〔『馬頭観音供』(芝金聲堂)、p35、p43。『六観音合行供』(芝金聲堂)、p43、p47。〕や「蓮華空行母」を伴う。チベット密教では一面四臂の赤い姿でヤブユムであり、ネパール密教では一面二臂の単尊が一般的で、中国密教ではその両方が有名である。ネパールでは「赤観音」は建国にかかわる重要な尊格であり、カトマンドゥ盆地でもっとも有名なお祭りの一つに『バタンの山車祭り』というのがあり、「ラト・マチェンドラ・ナート」〔「ラト・マチェンドラ・ナート」の意味は「ラト」(赤)・「マチェンドラ」(観音)・「ナート」(様)で、「赤観音」を指す。〕と呼ばれて、マチェンドラ・ナート寺院に祀られた「赤観音」が、4月に始まり6月までの約2ヶ月間掛けてカトマンドゥ盆地を隅々まで練り歩き、仏教徒のみならず、ヒンドゥー教徒にも人気のお祭りとなっている。
赤観音」が馬頭観音であることは、中国密教や唐密において「赤観音」を別名「蓮華王菩薩」と呼び、チベット密教では馬頭明王を「ペマ・ワンチェン」(蓮華王)と呼ぶことからもわかる。また、その証左ともなる「赤観音」の仏像が既に日本に渡来しており、五智の宝冠を被った観音像で、一面二臂の柔和相で馬頭はなく、正面で馬頭観音の「説法印」〔「説法印」とは、その本尊の内証を表すために結ばれる印相のこと。馬頭観音の場合には、「根本馬口印」や「剣印」、「棍棒印」、「根本印」等が「説法印」として結ばれる。いわゆる観音の法身や、「得自性清浄法性如来」が法界からその姿を報界等に現す際にはこの「説法印」を結ぶ。例として、『理趣経』の第二段においては、大日如来が報界の曼荼羅に姿を現す際に「智拳印」を結び、これを「説法印」としている。また、日本の金剛界の大日如来は「智拳印」を、胎蔵界の大日如来は「大三昧耶印」を「説法印」とし、この両印を結ぶのを常としている。〕を結んでいて、背中に明代の刻印が見られる〔千葉県高野山真言宗蓮華堂蔵。〕。
日本では、馬頭観音の柔和相は『覚禅鈔』〔『覚禅鈔』(かくぜんしょう)は、『覚禅抄』とも表記し、真言宗小野派・金胎房覚禅(1143-1213頃)が編纂した事相の作法と図像集。当時、高野山醍醐寺勧修寺に伝わる資料に加え、「図像抄」や「別尊雑記」等を調べて、別尊法の次第や図録を書き記したもの。当初は、百巻あったともされ「百巻抄」とも呼ばれるが、原本は失われて写本のみが伝わり、写本ごとに内容が異なる。その中で有名なものには「勧修寺本」(かじゅうじぼん)がある。〕に初出して、四面二臂の異相の馬頭観音であり、この姿は『陀羅尼集経』に説くところと一致している。いわゆる柔和相の馬頭観音として有名なものには福井県中山寺の「馬頭観音像」(三面八臂)〔『秋季特別展 馬頭観音信仰のひろがり』(馬の博物館)、p38。〕や、滋賀県横山神社の「馬頭観音立像」(三面八臂)〔『秋季特別展 馬頭観音信仰のひろがり』(馬の博物館)、p34。〕があり、憤怒相と柔和相の両面を持つものとしては栃木県日光市輪王寺の「馬頭観音像」(三面八臂)〔『秋季特別展 馬頭観音信仰のひろがり』(馬の博物館)、p51。〕も知られている。「赤観音」の名称は日本でも使用されていて、神奈川県岩流瀬(がらせ)の「赤観音」の石仏は、一面二臂の柔和相の馬頭観音であり、また、福島県古殿町松川の石仏は、三面八臂の憤怒相でありながら「赤観音」の名で知られている。異相として、千葉県多古町蓮華堂の「馬頭観音像」は、化仏としての阿弥陀仏を頭上に戴き、馬頭はなく、一面八臂の柔和相で白馬に乗った「赤観音」である。
馬頭観音の石仏については、馬頭の名称から身近な生活の中の「」に結び付けられ、近世以降、民間の信仰に支えられて数多くのものが残されている。また、それらは「山の神」や「駒形神社」、「金精様」とも結びついて、日本独自の馬頭観音への信仰や造形を生み出した〔大護八郎 著 「馬に関する信仰と馬頭観世音」(『日本の石仏』 季刊第10号 特集・馬頭観世音)、pp.4-10。〕。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
ウィキペディアで「馬頭観音」の詳細全文を読む




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